店長日記 中華メーカーのブランディングを1年受け持って感じた事
【店長日記 中華メーカーのブランディングを1年受け持って感じた事】
こんにちは。
本日は昨年の7月から日本でのブランディングを受け持っておりました
ODINホイールの経験を元に中華メーカーについて考えてみます。
※大変長く4800文字を越えるブログになってしまいました・・・。
長文・乱筆失礼します。
今年の9月20日にじてんしゃ RINGSの販売体制の維持もあり、
1年の任期を終了させていただきました。
期間中は大変多くの方にお世話になりました。
感謝しております。
ODINホイールは2022年頃に日本に来て、販売網を築くのに苦労を
されていました。
そこを私がODINの日本代理店の代表と協力をしてODINの日本
ブランディングを受け持つ事になったのが、2023年7月です。
勿論私の時間が取られる事ですから報酬面等もお話をした上です。
まず、私はODINのホイールについて、よくamazonなどにある
所謂中華ホイールとの差別化をしないといけないと説明をしました。
スペックだけでは似通っていれば価格で勝負となってしまう。
そうなると他中華メーカーとカニバリズムを起こしてしまうため、
日本でなぜODINを買うのか?それを確立しないといけないと話しました。
そして顧客ペルソナをしっかりと選定しないといけないとも話しました。
全ての人に好まれる製品はまず難しい事ですし、
逆に新興の強みとして挑戦や少し尖った所も個性として必要かもしれないと。
日本代理店の代表はペルソナは設定はしていませんでしたが、彼からは
漠然と、レースで使用して欲しいイメージがあると伝わりました。
そのイメージを聞いて、
私が仕事として受け持った2023年7月時点でODINが行っている事で
止めた方が良い事を話しました。
①インフルエンサーにむやみにばらまくのは止める事
これは、所謂案件としてインフルエンサーにばらまくと、
その時に良くあったインフルエンサーからの購入でインフルエンサーにバックと
言う、クーポン案件イメージが着いてしまい、初速として人の目に触れる事があっても
長期的にはマイナスに繋がる可能性もあると言うこと。
なぜならば現状顧客ペルソナも設定していない現在の状態だと
インフルエンサーと綿密に打ち合わせは出来ない。
計画性もなくただインフルエンサーに渡した所で、恐らく
“コスパ”だけをレビューした薄い評価になる可能性もある。
また、インフルエンサーには真摯にレビューをする人も確かに存在はするが、
過去にどのような炎上があったかなどの調べは綿密にしなくてはいけないし、
今後の行動を縛る事までは出来ないと言う事を話しました。
つまり、今はODINでも任期後は他の正反対のホイールを
履く事もあり得る、と。
インフルエンサーの方が自ら購入していただけたら素敵な事だが、
現状そこまでのブランドには育っていないと伝えました。
②ODIN直でのamazonショップは一時止める事
当時はamazonでODINホイールは販売されていました。
amazonを否定するわけではないのですが、他の中華の安売りのイメージと
近しくなり、レースでの使用をイメージするなら、
・所有したユーザーが誇りと満足感を持つ事。
・補修やマニュアルや補償対象等を明確化する事。
・店舗様との関係が大切になる。補修やマニュアルを整備するのと同時に
店舗様に扱ってもらいたいなら、直でのamazonショップは間違いなく
懸念材料になる。と話してます。
③SKUを増やす事をやめる事。
当時は15SKU扱っていました。
ただ、名前を変えただけで良く分からないアイテムも
あったので、これは在庫リスクを考えると止めた方が良く、
SKUを絞り、大切に一つ一つの商品の仕様やマニュアルを明記して
育てあげた方が良いと、伝えました。
15→6にSKUを絞りました。
他にも要点は細かく伝えていますが、
伝わって欲しかった事は、
中華特有の物量を活かした安売りはやめて、
しっかりとアフター面も拡充して、ブランドとして育てよう。
と、言う事になります。
最初の打ち合わせが終わり、
2023年7月にまず行った事はヴェロリアン松山にODINホイールの使用を
打診する事でした。
運営の方の理解にも恵まれ、阿部嵩之選手にテストいただく機会を得ました。
※画像は境原さん撮影 今年の6月
阿部選手は大変忌憚ない意見をくれました。
端的に言うと2022年のODINでは戦えないと言う総評だったと
思います。
その中で、阿部選手は波の形状に興味を持たれていたので、
2023年の8月の時点で、私は本国に45-50㎜ハイトで
1350g位のホイールを作って欲しいと依頼をしました。
カーボンスポークやセラミックベアリングは指定していませんでしたが、
恐らくこのスペックになると着いてくる物だと言う話はしていました。
私は年内は作成は無理だろうと考えていて、
その間のブランドストーリーやヴェロリアンの方々の期待に
どうやって応えていけば良いのか、日々悩んでいました。
しかし、3週間後・・・・
まさかの希望通りのホイールが出来ました。
私は日本企業の製品のリリースまでのスピード感であったため、
大変感銘を受けるとともに危険を感じました。
それは
すぐに作れる=すぐに仕様も変更も出来る=補修等のアフター面の整備が困難
と、言う所に危険を感じたのです。
しかし、チームにとっては朗報でもあるため、テストホイールを
御使用いただき、合格点をいただいたので、
プロも使用していくと言うブランディングが一つできたと安堵もしたのも事実です。
しかし、私は
選手の声を拾い、メーカーに届け、出来る、出来ないの葛藤や
製品のリリースタイミング、補修部品含めた安心、
等の綿密なストーリーが重要だと考えていたので、
物が出来るのが先と言うのは律していかないといけないと
感じたのでした。
最初に話していたアフターの拡充も今一つ本国と話が通じず、
「マニュアルや仕様書はない。中国では当たり前」と、
言われた時は本当に椅子から落ちそうになるくらい驚きました。
私からは、
「日本市場を築きたいなら避けては通れない。作ってくれ」と、
言う話を重ねていました。
これはこの後もODIN以外の中華メーカーを拝見していて思ったのですが、
とにかく物を作るのが速い。
そして、マイナーチェンジでネーミングが違う物をどんどん作っていくのです。
これはOEMで、色々な知見を持ち物造りが出来る下地があると言う事もあるのだと思います。
繰り返しますが動きが速いと言うのは良い点も悪い点もあります。
ただ、柔軟と拙速を間違えてはいけません。
UCI認定などは製品が安全で高品質と言う証明をするためのテストをします。
同じ名前のホイールでも構成部品が違ってしまえばそのホイールは別物と
なってしまうと言うのは想像がつくと思います。
また、ベアリングやシャフトなどの補修部品の用意ももしかしたら
変わってしまうかもしれません。
日本の企業がモデルチェンジ等が遅いと言うだけではなく、
研究をして、リリースのためのタイミングを綿密に見定めていると
言う側面もある事なのだと考えております。
これは5月に上海に渡った時にODINの本国の社長に要望をした物です。
※本国に渡る前にGoogleで中国語に翻訳しているので、つたない点はご容赦下さい。
一向にマニュアルや補修の拡充が進まないので、直接意思の疎通をする目的も
訪中にはありました。
資料の数値は例であり、ODINのホイールが、と言うわけではありません。
本国の社長には品質の安定をまず求めました。
そして次に補修の拡充を依頼しました。
何度目の依頼か忘れてしまいましたが、
補修を明確にするための仕様書も併せて作成を依頼しました。
そして、DT SwissとはODINは交流があるとの事でしたので、
DT Swissの良く出来ているサイトを紹介しましたが、
中国ではグレートファイアウォールが敷かれていて閲覧が
出来ないと本国の社長は話していて、
口頭で通訳を介して説明をした記憶があります。
最後に品質と在庫の安定を行うために日本の工場を設立も考えないか?と
話をしています。
そして、勝手に仕様変更はしない。これを最後に守ってもらう様に話しました。
私は、
仕様書やマニュアル、補修部品。
そういった物が明確でないと、日本で扱う店舗が困り、
そしてユーザー様にも間違いなくしわ寄せが行く。
ここを丁寧に充実させて、中華メーカーでもSHIMANOの様に
安心を実現していこうと話したのでした。
※画像は境原さん撮影 今年7月
ヴェロリアン松山の鈴木譲キャプテンは、
様々なチームを渡り歩き、ホイールも色々なメーカーを使用されて
いたので、ODINの目指す方向性や鈴木キャプテンの重要視する所を
聞きました。
鈴木選手は
「癖の無さ」
と、言う言葉を何度か使っていました。
その言葉の意味を尋ねると、
例えいくら軽くて良いホイールでも一回の落車や
バイクを倒した位で変形してしまっては意味がない。
直したりして再現性が高い物を癖が無いと評している。
と、言うとても参考になるお言葉だったと記憶をしています。
日本では目先の飛び道具の様な
軽くて安い、セラミックやカーボンスポークを使っている!
と、言うのは一時は売れるかもしれません。
それは大手で50~70万もする物と同等のスペックが
20~30万で買えたらと、いう気持ちは理解できます。
何度か私も店長日記で話してますが、
店長日記 中華製品 魅力と危険
中国のメーカーが、魅力的な物を作れるようになってきているのは
間違いありません。
一見のスペックでは大手や古参のメーカーに近しい物が出来ていると
思います。
ただ、それを完全コピーとしているのか。
それとも、
オマージュとしてリスペクトをして自社の意思を入れて販売しているのか。
これは中々判断が難しい所だと思います。
私はですので、
仕様書や補修部品のアフター。
そして、綿密な製品の製作スケジュールがあるか?
等を見て行きたいと考えております。
ここで、ベアリング会社の株式会社CERABEA社のリンクを
貼らさせていただきます。
※お電話をして、ブログにリンクを貼らさせていただく許可を得ています。
セラミックベアリングについて
御存知の方は多いお話なのかもしれませんが、
セラミックベアリングと言う項目だけで種類や特性は多々ございます。
この中のどのベアリングが自転車のホイールに適している等は
そこまでの研究に至っていない私は申し上げられません。
ただ、もしコピーの気持ちで行くのであれば、
もしかしたらセラミックの中でもコストが低い物を選ぶ可能性は
あるかもしれません。
大手メーカーは様々な思想の元、設計をして製品をリリースする事が
殆どでしょう。
それをただ、工場で作れるからコストを抑えて一見似た物を作っていたり、
流動性が高く構成部品をいつでも変えるために仕様書等は用意していないかもしれない?
など、いくら大手と比べて安くてもこれは本当にコストパフォーマンスが良いと
言えるのか?と、私は思うのです。
店長日記で中華メーカーを安易にコストパフォーマンスで評するのは
止めると言うのはこういった体験から来ているのでした。
一年間口酸っぱく伝えてましたが、
ODINで仕様書などを用意できなかったのは事実です。
彼らはすぐに作ると言う話をしておりましたが・・・。
最後に。
私の知人で良く、中国の業者とお仕事をされている方からの
中国の業者の特徴をお話します。
中国の業者は商品の仕様が一番まともなのは
大口の契約を取ってきたファーストロット。
その大口との契約をまとめるまでは他の生産ラインを止めてまで
大口からの依頼に徹底する。
しかし、一度契約が決まったら後は品質は落ちていく事が多い、と。
これが今、日本に入ってきている中華メーカーにどの程度
当てはまるかはわかりませんが、私は少し理解できる側面もあります。
大変長くなりましたが、私の実体験からのお話とさせていただきます。